Vol.4 古民家シェアハウスを営む林さんに聞く「男性育休のリアル」と「家族での移住で得たこと」

神戸市北区で古民家シェアハウスを運営する林さん。育休を8ヶ月取得し、都市部から地方へ家族で移住したその背景には、どんな想いや現実があったのでしょうか?
今回は、男性の育休取得と地方移住という2つの選択を実践した林さんに、当時の決断や家族の反応、現在のライフスタイルについて伺いました。


― まずは林さんご自身とご家族について教えてください。

今は神戸市北区に住んでいて、古民家を活用したシェアハウスを運営しながら、講演活動などもしています。家族は30代前半の妻と、2歳の娘の3人暮らしです。


― 林さんが育休を取られた経緯を教えてください。

娘が生まれたのが2019年7月で、翌年の2020年3月まで、約8ヶ月間育休を取りました。正確には9ヶ月くらいだったかもしれません。理由はすごく現実的で(笑)、3月に保育園に入園させたかったからです。

当時は北海道で働いていたんですが、子育ての不安もあり実家のある神戸に戻ることにしました。勤めていた会社がベンチャー企業だったんですが、育休を取ると助成金が出る制度があって、それも後押しになりました。


― 育休の取得にあたって、ご夫婦でどんな話をされたのでしょうか?

あまり「話し合い」という感じではなく、自然な流れで決まりましたね(笑)。家事では、料理や買い物は僕の担当でした。育児も、授乳以外のこと――おむつ替えやお風呂、離乳食作りなどは分担してやっていました。

育休の期間も、自分たちの希望と保育園のタイミングから決めました。本音を言えば、もっと長く取りたかったです。


― 育休中に「移住」という選択肢が出てきたのはなぜですか?

都会での子育てに限界を感じたのが大きかったですね。もっと地域の人と関わりながら、農村部のようにみんなで子育てできる環境があったら…と。

ちょうど育休中に参加していた「農村スタートアップ」という起業塾で、今住んでいる古民家とのご縁がありました。その空き家をどう活用するかという話の中で、「じゃあ僕たちが住んで家賃を払えばいいのでは?」という話になって。


― ご夫婦での話し合いはスムーズでしたか?

はい、移住の話が出たその日のうちに「面白そうじゃん!」と。妻も「今の生活より可能性が広がりそう」と賛成してくれて、すぐに決まりました(笑)。


― 移住後のお仕事はどのように決められましたか?

移住前は小学校の教員をしていたんですが、1年ほどで体調を崩して退職しました。移住後は、時間に縛られずに働ける仕事を探していて、今のシェアハウス運営にたどり着きました。人と関わるのが好きなので、自分に合っているなと感じています。


― ご家族の反応はいかがでしたか?

妻は最初はあまり関心がなかったかもしれませんが、今はこの生活を楽しんでくれていると思います。両親は「近くなった」と喜んでくれて、壁に漆喰を塗ってくれたり、引っ越しも手伝ってくれたり、すごく協力的でした。


― 移住後の暮らしが落ち着くまで、どんな手続きや苦労がありましたか?

住まいは空き家を改修して住み始めたので、建築士さんとの出会いがとてもありがたかったですね。地域の方々が宣伝してくれたりして、心強かったです。

保育園の転園手続きはちょっと面倒でした。見学や書類などが必要でしたね。1年くらい経った今、ようやく「暮らしているな」と実感できるようになってきました。


― 育休を取ったことで感じたメリット・デメリットを教えてください。

デメリットはやっぱり収入が減ることですね。2ヶ月に1回の振込なので、その間はけっこうヒーヒー言ってました(笑)。

でも、メリットはたくさんあります。夫婦両方が子育てに主体的に関われること、子どもの成長を間近で見られること。「育休を取る男性なんて偉いねぇ」って褒められたり(笑)。妻の仕事の可能性も広がったと思います。


― 移住してよかったと思う点、また困った点があれば教えてください。

困ったのは、寒さと都会から遠くなったことくらいでしょうか。

でも、良かったことの方が圧倒的に多いです。家賃が下がったし、自然が近くて、地域の人とのつながりも増えました。人がたくさん来るようになって、イベントや新しい仕事のチャンスも増えましたね。


― 最後に、今のライフスタイルで特に気に入っている点があれば教えてください。

住み開きのシェアハウスという形は、固定費を下げつつ、人との関わりを増やせるのが魅力です。結果的に幸福度が上がる暮らし方だと思います。今後も無理のない範囲で人と関わりながら、丁寧に暮らしていきたいですね。


編集後記

仕事と子育てを見直すきっかけとしての「育休」。その延長線上での「移住」という選択が、林さんご家族にとって新たな可能性を開きました。都市での働き方・暮らし方に疑問を感じている方にとって、林さんの言葉には多くのヒントが詰まっているかもしれません。


男性の育休取得|メリット・デメリットと制度解説

少しずつ浸透しつつある「男性の育休取得」。背景には制度・社会の変化があり、企業規模や手続きの違いにより取得状況もさまざまです。

■ 給付金の仕組みと支給率

さらに、2025年4月からは、両親が14日以上育休を取得すると「出生後休業支援給付金」が上乗せされ、最大28日間で実質「80%」支給、実質的に手取りまで補填される仕組みも導入されました(keiyaku-watch.jp)。

期間支給率手取り相当
〜180日67%約80%(社会保険料免除・非課税)(mhlw.go.jp)
181日〜50%
両親育休併用時(28日)+13%(支援給付金)約100%
合算結果最大80%相当

■ 取得率の現状(企業単位の調査より)

一方、2023年度には「産後パパ育休」含む取得率が国内全体で30.1%に上昇。特に、1000人超企業では平均46.2%というデータもあります(aska-pharma.co.jp)。


■ 取得期間の傾向(2023年度データ)

取得期間割合
5日未満15.7%
5日〜2週間22.0%
2週間〜1か月20.4%
1〜3か月28.0%
その他残余

男性の育休取得の主流は「1〜3か月未満」と短期集中型が多く、制度改正や企業風土の影響も大きいようです。


■ メリットと注意点まとめ

メリット

  • 子どもとの時間を密に持てる
  • 家事・育児負担の分担が可能
  • パートナー支援と家族の絆強化
  • 企業や社会からのポジティブ評価もあり

デメリット

  • 給付金はあくまで「67〜50%」で、収入全額ではない(ただし、制度改正で改善中)
  • 支給タイミングが2か月おきで、家計に不安材料
  • 取得しにくい企業文化も根強く、職場・上司の理解がカギ

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